個人の牧場に入るには


 ニュージーランド人スタッフと一緒にロケハンをしていた。
 時刻は夕方の5時。
 朝からスタートしたドライブであったが、そろそろ日も暮れようかとしていた。しかし、なかなかヒットする場所が見つからず、疲れも出てきて車内は少しどんよりしていた。

 ある日本人スタッフが窓の外を指差した。
 「あっ、あそこに行ってみたい」
 見ると、そこは柵がしてある個人の牧場。勝手に入るわけにもいかない。まずは、地主を探さなくてはならない。ところが周りには地主の家らしきものはない。それどころか何もない。ただ、ただ、牧草地帯が広がるだけである。今日はこれで帰って、地主を探して連絡を取って、行けるとしたら明日かな?と思った。

 場所をハッキリさせるためにニュージーランド人スタッフにも
 「彼があそこに行ってみたいって言ってるから」とその場で伝えた。すると
 「うん、わかった」と言って携帯電話をかけだした。そうか、このスタッフはココが誰の土地だか知っているようだ。それで地主に電話をかけて了解を取っているんだ。
 「おーい、俺だよ。ところでさー、今、オマエの牧場の前にいるんだけど見える?」と電話をするスタッフ。
 ちょっと待てよ、「見える?」って言ったよなー。でも、周りには何もないはずだし。
 「うん、今、道路にいるんだよ。こっちからはオマエのトラックが見えるんだけど」
 よーく目を凝らすと、たしかに向こうの方にピックアップトラックらしき物体が止まっているのが見える。
 「そうそう、それが俺だよ。今からそっちに行きたいんだけど、ゲートの鍵どうしたらいい?・・・・・うん、わかった、じゃあ」
 電話を切ったそのスタッフは少し高い声で
 「No problem」と言って車をゲートの前に走らせた。

 この彼の行動と声の高さは一気に車の中を和ませた。
 実際に牧場内に入ってみても、かなりすばらしいロケーションで、その日一番のヒットとなった。

 我々が引き寄せたのか、引き寄せられたのはわからない。おそらく両方だったのだろう。幸いなことに、地主もその場にいたので、ここで撮影してもOKというのもその場で返事がもらえた。
 
 縁と言うのはおもしろいものだと思った。

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Author:tdc
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ニュージーランド在住の日本人コーディネーターです。

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